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話題のつくり手へのインタビューやENUに関する情報を発信
半島の最先端で地域活性化を目指す営業部長
僕が住んでいる蒋渕という場所は、愛媛県宇和島市にある三浦半島の先端部にあります。人口250人程度の小さな漁村で、単純に言えば「過疎地」や「僻地」と言われるようなところです。「東京から一番遠い場所」と聞くと沖縄や北海道をイメージするかもしれませんが、飛行機などの交通手段などが増えた今、実は蒋渕がある四国の西南地区が「東京から一番時間がかかる遠い場所」なんです。でも、だからこそ、人々が知らない魅力がたくさんある、オンリーワンの場所だと僕は思っています。
バイヤーさんに「蒋渕(愛媛)って日本の食の、最後の秘境だよね」と言われるくらい、みんなが知らないおいしい食材があります。それは、蒋渕が面している宇和海という海のおかげ。瀬戸内海や太平洋など、日本のすべての海が交わっている宇和海は、栄養が豊富で餌となるプランクトンが発生しやすく、獲れる海産物もとてもおいしいんです。潮の流れが激しいので、身が引き締まったいい魚が育つ。本当にいい場所です。
僕自身は生まれも育ちも蒋渕ですが、高校から一旦地元を離れました。22歳のときに家業の真珠養殖を継ぐために戻ってきて20年間、蒋渕の海と生きてきました。真珠を辞め、漁協の臨時職員を経て、蒋渕を盛り上げていく「こもねっと」に携わるようになったのが2012年です。
「こもねっと」の由来は、「蒋渕ネットワーク」の略です。蒋渕の魅力を伝え、日本中、そして世界中の人たちに広めていくことを目的に、「食べよう蒋淵特産品!!広げよう蒋淵ネットワーク」の合言葉を掲げ、2004年に設立しました。
営業部長としての僕の仕事は、主に企業への営業と出張の対面販売。人見知りなんですけど、人に会うのは好きなので対面販売は楽しいです。僕たち「こもねっと」のポリシーは、ちゃんと対面でお客さんの心を掴んで、深いつながりで商売していくこと。蒋渕という地域や素朴な商品の魅力を伝えていくうちに、いつの間にかファンだと言ってくれるお客さんが増えてきたのが嬉しいですね。「人のつながり」を大切にしたからこそ、今の自分ができたのかなと思います。
蒋渕には、農業がないんです。みんな、何かしらの形で海の恩恵を受けて生活しているからこそ、海を守り、海を核にした地域づくりを進めていきたいと考えています。たくさんの人に、海とともに生きる僕たちの暮らしを知ってもらうことが、めぐりめぐって大切な海や地域、食文化までを守ることにつながると思っているんですね。
まず知ってほしいのは、ゴミ問題。いろんな海とつながっている宇和海だからこそ、日本中・世界中からたくさんのゴミが日々集まってきて、掃除をしてもゴミがなくなることはありません。山からも川からも、すべてが流れてきて、海がゴミ箱になっちゃってるんです。海の現状を伝えることで、少しでも「このゴミがどこに流れ着くのか」をみなさんが考えてくれたらいいなと思っています。
海は人が手を入れれば入れるほど悪くなるので、それを生業にしている僕ら水産業者も「海を汚している」という自覚があります。それでも、たくさんの食を育み、人の食と生活を支えてくれている海に、できる限りのことはしたい。水産業者も給餌方法・量や畜養尾数など、環境に配慮した養殖方法の改善を行っており、海の環境もひと昔と比べてずいぶん改善されてきています。こもねっとの代表がよく言う言葉に「願わくば今以上、悪くても現状維持」というものがあります。まずは今よりも悪い状態にならないように頑張っていきたいです。
もちろん悪い面だけではなく、海がある暮らしの美しいところもお伝えしたいですね。特に、こもねっとで販売している食品の生産者の想いや、彼らの生きる風景を発信できたらと考えています。
昨今叫ばれている「食糧危機」についても、日本の地方で懸命に食を生み出す生産者を守ることが、解決につながるんじゃないかと思っているんですね。地方の生産者の人たちって、本当にかっこいいし、美しいんです。餌をやっている姿、魚を絞めている姿、食を支えている姿は本当に美しい。彼らのことを知り、地方産品を応援する意味を考えてもらえたら嬉しいです。
多くの過疎地がそうであるように、蒋渕も人が減って、やる気や元気がなくなって「田舎でがんばっても無駄だよね」という空気があります。でも僕は、蒋渕を前向きに活性化していきたい。
2018年に豪雨が西日本を襲った時、蒋渕でも大きな被害がありました。支援がどんどん集まっていく大きな都市や目立つ自治体を見ながら、いろんなネガティブな感情やマイナスな思考に襲われて、いじけそうにもなったのを覚えています。でも、どん底まで行ったら逆に「やれることをやろう」とポジティブな気持ちに変換せざるを得なくて、まずは目の前のことに一生懸命取り組むことを決めました。そうすると、知り合いが助けに来てくれたり、大手の企業さんとの話が決まったり、明るい情報や商売が入ってきたんです。あれから、前向きに生きていきたい、とずっと思っています。
せっかくみんなで立ち上げた「こもねっと」をもっと広めたいですし、あとは自分が生まれ育った大切な場所を、もっとたくさんの人に知ってもらいたいですね。死ぬまで、この蒋渕で生きていきたい。そのためにはできることを求めて進んでいくしかないじゃないかって今、ただひたすら前向きにやっています。
・ENUに期待していること
「こもねっと」では、企業間コラボをとても大事にしています。例えば、「お魚レストランシリーズ」というバジルソースは、材料や味付け、パッケージなども地元の方々との共同制作です。ENUには異業種のつくり手さんがたくさんいるので、コラボしてお互いにプラスになるような事業ができたらいいですね。こだわりのつくり手さんと一緒に何かできたら1+1が2以上のものになるんじゃないかな、と期待しています。お互いに発信し合えるのもいいし、信頼関係が生まれればノウハウも共有できる。あとは何よりも“やる気”の増幅。お互いに「がんばろう」と言い合って前向きになれるのが、コラボレーションのいいところだと感じています。
<こもねっと高木さんのプロジェクトは、こちらをご覧ください。>